美しい月の夜
ラパスに着いて最初の土曜日の夕暮れ、
外から聞こえてくるバンダの音に誘われて、
マルセロの家族と一緒にブッシュ通りに出た。

どこか地方の若者たちのモレナーダに、
十代後半と思しき若者たちのバンダが音楽を付けていた。
「いまは若者たちのバンダの方が仕事が多い。酒代がかからないから。」

そのままブッシュ通りを横切って、ハイチ市場の前にあるマーケットへ行った。
「このマーケット、大きくはないけど、だいたい何でも揃うんだ。」
18才になったマルセロの息子マテオは、日用品をかごに入れてゆく。
「ぼくはこの店知らないよ。」
「そう?ずいぶん前からあるんだけどね。」
街の変化は、冷静に7年の経過を感じさせる。

東の空に、きれいな月が輝いていた。

「この月、クレッシェンドかデクレッシェンドか分かる?」
「デクレッシェンドじゃないのかなぁ?」
「ううん、クレッシェンドだよ。」

マテオも、いつの間にかがっしりとした体格の若者になった。
c0357413_20511039.jpg

月の光は、静かに、美しく、夜道を照らす。
灯りの消えた部屋の隅をも、
ほのかに、優しく照らすのが、月の光だ。

ラパスの街の隅から隅まで、
月の光は知っている。
どこで誰が、何を思っているのか、
月の光は知っている。

黙して語らぬ月の光は、
何から何まで、知っている。
c0357413_20513952.jpg

今宵の月も、息をのむほどに美しい。
明日は冬至である。





[PR]
# by mixturamusic | 2017-12-21 21:26
ルス・デル・アンデ en La Paz 2017
ほぼ7年ぶりのラパス。
ダラス〜マイアミを経由しての旅程は、やっぱり長い。

モダンな空港ターミナルにびっくり。
かつては最小限の機能だけを備えた空港だったのに…。
広くなった分、入国審査まで歩く距離も長くなり、高山病の身にはこたえる。

早朝にもかかわらず、マルセロが、愛娘シュシュウと一緒に迎えにきてくれた。
c0357413_16542968.jpg

7年ぶりの再会。
改修工事中の高速道路を下りながら、
とりあえずボリビアの近況について話を聞いた。

ラパスの町が、朝の光に照らされて浮かんでくる。
途中、イリマニを背景に、シュシュウと写真を撮った。
c0357413_16583565.jpg

まだヨチヨチ歩きの頃から、よーく知っているシュシュウ(本当の名前はアンドレア)。
今はボリビアで、コンサートのプロデュースを仕事にしている。
ルス・デル・アンデ7年ぶりのコンサートも、彼女の企画である。
「ルス・デル・アンデのファンとして、もうこれ以上待てないわ!」
彼女からのメールでなければ、私も今回のボリビア行きを決めていなかっただろう。
c0357413_16590352.jpg

ボリビアの新聞『LA RAZON』紙・日曜版(11月5日)の文化欄。
『ふたたび(音楽の)道へ』
友人の音楽家セサール・フナロが寄稿してくれた記事である。
20年前に作った組曲『Suite Ecologico SER』と、
この7年間の福島での経験とを関連づけて、とても良い文を寄せてくれた。
-------
高山病が癒えたかどうかまだ分からないうちから、
テレビやラジオへの出演が始まった。

どこの局へ行っても、キャスターもスタッフも、そのほとんどが旧知の仲である。
「いやぁ、久しぶり!」
必ず強いハグから会話は始まる。

歌手でチャランゴ奏者のペペ・ムリージョは、メディアでの活動が長くなった。
すっかりTELEVISION POPULAR(4チャンネル)の顔になっている。
c0357413_16563191.jpg

ラジオキャスターのパトリシア・ゴンサレス。
いつも変わらぬ笑顔で迎えてくれる。
「あなた達のためなら、いくらでも時間枠を取るわよ。」
フルメンバーで訪ねた今回二度目の出演で、
約束通りのスタジオ生演奏に、本当に感激してくれた。
c0357413_16561116.jpg

突然決まったTELEVISION FIDESへの出演。
神父さんがキャスターを務める人気番組だそうだ。
『平和に生きる権利』を歌ったのあとのインタビュー。
数年前、日本にも滞在したことのある神父さんとは、広島の話をした。
c0357413_16554857.jpg

TELEVISION POPULARのオーナー、モニカとも7年ぶりの再会。
11月2日はちょうどTODO SANTO…ボリビアのお盆である。
局を立ち上げた故カルロス・パレンケ(モニカの夫で、元音楽家のジャーナリスト・政治家)の祭壇を設えた特設会場での生放送、
モニカに招かれて、私も輪の中に加わった。
オンエアーの中で、モニカといろいろな話が出来たことは、とても良かった。

ボリビアでは、予定外、予想外の出来事が多々起きる。
そんな日常が、刺激的で面白い。
c0357413_16552736.jpg

同じTELEVISION POPULAR、土曜夜の人気番組『LA WISLLA POPULAR』。
ゲストにスタジオで料理を振る舞ったり、お酒をご馳走したり。
ゆるーい番組だが、チョリータのキャスター、イネスが、番組を締めている。
スタジオから出たのは、もう夜中の12時過ぎである。
c0357413_16550490.jpg

音楽ジャーナリスト・キャスターのラミロ・プラタとは、いつからの付き合いだろう?
「君は年中変わらないね!」
独特のバリトンでの放送は、根強いファンを持っている。
今回も彼に、コンサートのプレゼンテーションをお願いした。
c0357413_16570147.jpg

--------
コンサートのための練習は、
毎日トーニョ(チャランゴのアントニオ・ペレス)の家のリビングルーム。
ドラムセットも入る大きな部屋である。
練習の合間に、毎日美味しいお茶をご馳走になった。

ボリビアでの音楽の組み立て方は、ひたすら一緒に練習することである。
一緒に音を出す事によって、信頼関係をより深めるのである。
練習もみんな楽しそう。
--------
思い出のたくさん詰まったラパス市立劇場。
劇場の竣工は1845年。
正しくはTEATRO MUNICIPAL ALBERTO SAAVEDRAである。

何十年もこのホールの鍵を預かるドン・ペドロ。
いつもと変わらぬ表情で迎えてくれた。
今までいくつのコンサートを世話してきたのだろう。
c0357413_16594450.jpg

c0357413_16574321.jpg

二週間の、ぎっしり詰まったラパス滞在。
短いながらも、内容の濃い二週間であった。

もう7年もの間は空けまい。
ラパスの聴衆に約束してきたことである。

「ボリビアのフォルクローレのために!」
ルス・デル・アンデのメンバーひとりひとりが、
思いを新たにした7年ぶりのコンサートであった。
c0357413_16592365.jpg

早速来年の劇場を予約しました。
詳細後日!

写真左から
ANTONIO PEREZ (charango,bandoneon)
MARCELO PEÑA (quena)
MARCELO ARIAS (voz,guitarra)
LUIS GUILLEN (batería andina,percusión)
ROBELTO MORALES (siku,saxofón,flauta)
中央
木下尊惇 (guitarra,voz)

本当に良い仲間に恵まれて幸せです。

[PR]
# by mixturamusic | 2017-11-25 18:26
7年ぶりのイリマニ山
7年が、飛ぶように過ぎて行った。
久しぶりのラパスである。
町はどんなに変わっただろうか?

距離の向こうにある記憶の中の風景が、
すでに時の向こうにあるのかも知れない。

しかし、
イリマニ山は見下ろしている。
ラパスの町の喧噪を…

間もなく私も、
その喧噪の一部となるのだ。

7年ぶりのラパス。
7年ぶりのsorojchi(高山病)だけが憂鬱である。

c0357413_18245355.jpg




[PR]
# by mixturamusic | 2017-10-24 18:36
日々の暮らしのひとコマ
ラパスの町の、ロドリゲス市場の朝は早い。

まだ暗いうちから、バスやトラックで荷物が運ばれる。
ひと抱え以上ある大きな包みが下ろされると、
荷運びの人足カルガドールが、その包みをいくつも背負い、
荷主のうしろについて、それぞれの売場まで運んでゆく。
c0357413_21350133.jpg

荷主は、売り場の近くに預けてある日傘を組み立て、
見栄えよく、自分の商い物を並べてゆく。
野菜も、果物も、チーズも、鶏肉も、
彩り豊かに、
形よく、
分かりやすく、
美味しそうに並べてゆく。

日が昇り切ったころ、市場は最も賑やかだ。
新聞売りの少年の声が響き、
朝ご飯に、リャウチャを売り歩くチョリータの声も負けてはいない。

買い物客を呼び止める売り子の声。
日が高くなる頃に現れる、アイスクリーム売りのラッパホーンの音。

食料品に日用品。
ありとあらゆる物が商われるロドリゲス市場は、
常に活気に満ちている。
c0357413_21351975.jpg

お昼も少し過ぎて、そろそろ売り場を片付ける人もいる時間、
アコーディオンの音が聞こえてきた。

ロドリゲス市場の、いちばん東の端の方でアコーディオンを弾く、
盲目の音楽家がいた。
次から次へと、ボリビアの民謡、舞曲を奏でてゆく。

彼の足下には木箱がひとつ。
コインが入る溝が切ってある。

しばらく聞き入ったあと、木箱にコインをいくつか入れると、
チャリンという音がした。
『Muchas Gracias!』
一瞬弾く手を止めてから、またすぐ続きから弾き始めた。
c0357413_21353431.jpg

アコーディオン弾きの姿は、
ロドリゲス市場の一部となっていた。
その彼の奏でる音楽も、
ロドリゲス市場の音になっていた。

市場と共に、毎日が繰り返されるそれぞれの日常。
日々の暮らしとともにある、
生命の営みである。

日々の暮らしの連続は、
生命の証しである。
日々の暮らしの中にこそ、
健全な美しさが満ちている。
c0357413_21355394.jpg

私の奏でる音楽も、
…いつでも、どこでも、
地球の傾き加減を感じながらの、
日々の暮らしのひとコマであり続けたい。



[PR]
# by mixturamusic | 2017-09-21 22:27
土地に根ざす
よく動いた8月であった。

8月初めの川俣町山木屋は、驚くほど寒かった。
今回も宿泊させていただいた大内さん宅では、ブルーベリーを摘ませていただいた。
「4日も放っておいたら、ほら、みんなアリに食われっちまう。」

大内さん丹精のブルーベリーは、美味しくジャムにして、ゆっくりいただいた。
c0357413_10244303.jpg

会津若松の居酒屋『籠太』では、いつも旬の地のものを美味しくいただける。
翌朝、籠太の鈴木さんに連れて行っていただいた農家の児島さんは、
自然農で野菜やお米を育てている。
ナス、ピーマン、トウモロコシ、畑で採ったそのままで食べられる。
何ともびっくりするような野菜である。

三春〜会津若松〜南会津…福島の旅は、いつも旬の美味しさ満載である。

------------

中旬からは、今年二度目の九州。
蒲郡〜倉敷を経由するので、それほど遠くには感じない。
松下隆二さんと合流すれば、もう地元にいるのも同然だ。

今年もお世話になった北九州の池田国昭さんは、
瓶一杯の梅干しと二升の梅酢を用意して待っていて下さった。
ここ数年来、池田さんの梅干しが我が家の味覚の一角を占めている。
マンドリン、ギター×2、チャランゴの四重奏のレパートリーが増えるのも楽しい事だ。
・・・
和田名保子さんのお招きで、初めて法華院温泉山荘に伺った。
標高1.300m、久住連山の坊がづる湿原の端にあるこの山荘で、
和田さんは16年もコンサートを続けているそうだ。
九州最高所の源泉は、湯の花が程よく漂う好いお湯であった。
c0357413_10252493.jpg

国東半島での滞在も初めてである。
昨年5月から、国見ユースホステルを引き継がれた友人吉田さんご夫妻が、
コンサートを企画して下さった。

アクティブな拓也さん、真由美さんの周りに集うのは、とても個性的な土地の人たち。
料理人・拓也さんの「アースオーブン料理」に舌鼓を打ちながら、夜遅くまで話が弾んだ。

三方を美しい海岸に囲まれ、緑豊かな山里が続き、
あちらこちらに神社仏閣が散在する国東では、
すべてのものが生き生きとして、日の光も、海の煌めきも、とても力強く感じられた。
c0357413_10254446.jpg

・・
『土地に根ざす』とは、
その場所において、森羅万象の一部となることであって、
決して土地にしばられることではない。
真に土地に根ざしている人たちからは、
雄大な自由を感じる。




[PR]
# by mixturamusic | 2017-08-31 12:01



  木下 尊惇 
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31