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手帳の話
自分で自分の手帳を作るようになって7年が過ぎた。

もとはと言えば
父が和綴の芳名録や、スケッチブックを作っていたという記憶から。
好みの紙を、好みの表紙で綴じて使うのは、
何とも心地の良いものだ。
手帳の話_c0357413_23400136.jpg

今年から既成の手帳にしようかと考えていた。
実は昨年10月に、シンプルな一冊を買っていた。

手帳製作に使っていたイラストレーターの不具合や、
印刷中に起こるプリンタの不調もある。
何よりも、ちょっと面倒になったのだ。
手帳の話_c0357413_23395402.jpg

しかし買った手帳を開いても…
何となく書き込む気がしない。
既製品の方が格段に使いやすく機能的ではあるが、
手帳を開くのも面白くない。

1ヶ月遅れではあるが、
一念発起
今年も手帳を自作することにした。
手帳の話_c0357413_23394265.jpg

イラストレーターを使い、2021年のカレンダーを作る。
袋綴じのため、ひと月を左右に振り分けて。
唐紙(とうし)を切り、プリンターで印刷する。
藍染めの表紙は、三年前からの使い回しである。
手帳の話_c0357413_23394790.jpg

一枚ずつ折って、赤い絹糸で綴じ、落款を押して完成である。
今年は、私よりはるかに上手く綴じる妻にやってもらった。
キャンバス生地を表紙にした妻の手帳も、もちろん自家製である。

竹の繊維を漉いた唐紙は、繊維が粗く扱いにくい。
しかし何ともいえない味がある。

これでまた一年間、手帳を開くのが楽しみになった。
手帳の話_c0357413_23400610.jpg







# by mixturamusic | 2021-01-31 23:38 | 音楽 自然
木立に通り過ぎるチャランゴの響き
チャランゴ・ソロのアルバムを録音した。
完全ソロの演奏である。

7年前、私のソロ・アルバムの全てをプロデュースしてくれていた
キャンディレコードの遠藤さんを亡くしてから、
慣れ親しんだペールグリーンスタジオがなくなってから、
なかなか日本での録音に気が乗らなかった。
木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_22101477.jpeg
今年の5月から、琉水の宮ギャラリーの小宮さんの企画で
小さなチャランゴ・コンサートが始まった。
明るく開けた里に建つ、素敵な蔵でのコンサートである。

扉を開け放ち
火鉢の炭に火を入れて
お天気が晴れれば外に出て
あるがままのコンサートである。

木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_22101103.jpg
「チャランゴのCDが欲しいですね…」
小宮さんの一言から今回の録音が始まった。

「この場所で、コンサートをしているような、そのままで…」
という妻の言葉で決心した。

蔵の空気を
炭火の香りを
里の明るさを…そして
鳥たちの歌を。

一期一会のレコーディング。
ペールグリーンスタジオで、私の音をずっと録ってくれていた平中さんに
機材持ち込みの録音をお願いした。

室内に2本のマイク。
外に向けて別のレコーダーを回す。
木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_22101556.jpg
鳥たちはいつも
チャランゴの音にとても上手く答えてくれる。

絶妙な合いの手
美しいさえずり
心地よいリズム

レコーディングのキューとともに
鳥たちとの会話が始まった。
鳥たちとの合奏が始まった。

演奏上の傷よりも
鳥たちとの呼吸が大切である。

人間とは違う間合い…
…でもそれは

季節の間合いであり
地球の間合いであり
宇宙の間合いである。
木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_22101409.jpg
『木立に通り過ぎるチャランゴの響き』

新しいアルバムのタイトルである。
・・・
チャランゴの音列が
鳥たちのさえずりと
杜の木立ちに飛び遊ぶ
舞い落ちる葉とともに
幹から幹へと
枝から枝へと
木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_22101257.jpg
『木立に通り過ぎるチャランゴの響き』
 全6曲入り 1,500円(税別)
 12月10日発売予定
木立に通り過ぎるチャランゴの響き_c0357413_23014847.jpg






# by mixturamusic | 2020-12-02 23:13 | フォルクローレ
合奏するということ その2
巨匠カブールは
レコーディングでしばしば
スタジオに居合わせた誰かに
…それが音楽家であろうとなかろうと…
「録音してみる?」
と小さな打楽器を渡す。

「ほら、こんなふうに。」
「・・・・・」
「簡単だろ?」
と、お手本を鳴らして見せて
録音ブースに入れてしまう。
合奏するということ その2_c0357413_15462246.jpg

カブールいわく、「世界で一番危険な楽器」の『マッチ箱』。
丸いプラスチックの板に穴を開け、糸で木の実を吊るしただけの『雨の小箱』。
どちらも音楽経験がなくても
簡単に音は出せる楽器だ。
お手本のリズムも至って簡単。

演奏者はヘッドホンを耳につけ
再生音源を聴きながら
夢中でリズムを刻む…

合奏するということ その2_c0357413_15465083.jpg

大抵の場合
曲は最後まで行き着く事なく
レコーダーは途中で止められて
ブースの扉が開けられる。

カブールは笑いながら
「やっぱりいいよ」
「オレが入れるから」
「・・・・・」
合奏するということ その2_c0357413_15462600.jpg

巨匠が手にした小さな楽器から聞こえてくるリズムは
どこかヨレて聞こえる。
遅れているようにも、走っているようにも…

「きっと録り直し…」
と思っていると
カブールはコントールルームに戻ってきて
「これで大丈夫」とニッコリ。

各楽器の音量のバランスを取り直して聞くと…
本当に「これで大丈夫」なのだ。
それも絶妙の間合いで…

これぞ巨匠の技!!!
合奏するということ その2_c0357413_15460958.jpg

リズムには
『絶対リズム』と『相対リズム』がある。

『絶対リズム』とは
時計のリズムであり、メトロノームのリズムである。
『相対リズム』とは
呼吸のリズムであり、歩調のリズムであり、
動作のリズムである。

音楽においては
この二つのリズムのバランスが大切である。

『絶対リズム』に制御された音楽は
やはりどこかに違和感を感じる。
それは、
分刻み、秒刻みの日常に
大きなストレスを感じるのと同じである。

合奏するということ その2_c0357413_15465840.jpg

「私はリズム感がないんです…」
という話をよく聞く。
・・・・・
『リズム感がない』と思っていらっしゃるみなさん、
どうぞご安心ください。
リズム感がない人は、一人もいません。
息を合わせれば
歩調を合わせれば
結果としてリズムは合うものです。





# by mixturamusic | 2020-10-28 16:52 | フォルクローレ
合奏するということ その1
合奏をするのに最も大切なことは
『息を合わせる』こと。
『音を合わせる』のではなく
『息を合わせる』ことで
結果的に『音が合う』のである。

少なくともフォルクローレにおいては…
グループの構成員の立場は公平である。
楽器の違いはあれ
役割の違いはあれ
参加者全員の存在が
必然的に尊重される。
合奏するということ その1_c0357413_20561537.jpeg
リズムを合わせるためには
リズムの流れを共有する。
同じリズムの歯車に乗り
歩調を合わせて前に進む。

誰かのリズムに合わせるのではない。
全員が同じリズムで呼吸をするのである。
同じリズムの波に乗るのである。

決して急いではならない。
決して急かしてはならない。
余裕のある歩調で
余裕のある歩幅で
みんな揃って前に進むのだ。
合奏するということ その1_c0357413_20561408.jpg
まとまったアンサンブルにするためには
全員が完成品をイメージすること。
楽器に関係なく
パートに関係なく
聞こえるはずのアンサンブルを
みんなで共有し合うこと。

他のメンバーが重ねた音に
自分の音を混ぜながら
より良い響きにしてゆく感覚。
楽器に関係なく
パートに関係なく
全員がそれを実行すること。
合奏するということ その1_c0357413_20561294.jpg
アンサンブルは持ちつ持たれつ。
社会の有り様と同じである。

時にリーダーが必要となる。
リーダーとはリードする役割を担う人。
しかし
合奏においての立場はあくまでも平等。

全ての必然がそろった時に
アンサンブルは新たな命を吹きこまれる。

それが合奏の醍醐味なのである。
合奏するということ その1_c0357413_20561235.jpg

# by mixturamusic | 2020-09-24 21:49 | フォルクローレ
楽器の話 その1
楽器というのは不思議なものだ。
明らかに意志がある。
明らかに生命がある。
明らかに生きている。

「今日は良く鳴ってくれるな。」
と、油断した途端
ピッタっと音が出なくなる。

(そうあることではないが)
友人の楽器を借りて弾くと
『良い音でしょう』
と、楽器は優しく微笑みかけてくれる。
それを舞台で弾こうとした途端
楽器は急に厳しい表情に変わるのだ。
『あなたの言うことなんか聞きませんよ』
とでも言うように。
楽器の話 その1_c0357413_15280391.jpg
かつて私は、楽器を選んでいた。
私が、楽器を選んでいたのだ。

しかし、ある時気づかされた。
楽器の方が、私よりはるかに上手(ウワテ)であることに。
楽器が上手く鳴らせないのは
私が未熟だからだと。

名工たちの楽器には
時として、強烈な個性がある。
豊かな香りがある。
そして雰囲気がある。

製作家の持つ[音楽性]が
楽器が奏でる音楽に直接現れる。
時として、演奏家のそれに勝るほどに。
楽器の話 その1_c0357413_15280514.jpg
「楽器の製作はイメージですよ」
故・松村雅亘さんが教えてくださった。
彼の楽器を注文した直ぐあとのコンサート。
松村さんがホールまで聞きに来て下さった。
私のホールコンサートでの音を聞くために。
そして…楽屋で強く両手を握られた。
私の手のイメージを掴むために。

故・ヘルマン・リーバスが
ギターの裏板を手引きのノコギリで
縦半分に切っていたのを思い出す。
これが午前中すべての仕事。
「大変だろ?」と言う私に
「タカ、これはこうするもの。」
彼は涼しい顔で即答した。
楽器の話 その1_c0357413_15280506.jpg
何でもかんでも利便性を求める世の中
社会は楽器にもそれを求める。

より大きな音量
より弾きやすく
より正確で
常に安定していて
どんな環境にも対応する。

中には
何の努力もなく
上手く演奏できたフリをする機械まで出来ている。

何のための音楽か?
何のための演奏か?
何のための楽器か?
楽器の話 その1_c0357413_15291723.jpeg
楽器には心がある。
楽器には魂がある。
音楽に携わる者は
重々それを理解すべきである。





# by mixturamusic | 2020-08-12 16:32 | フォルクローレ



  木下 尊惇 
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