自分で自分の手帳を作るようになって7年が過ぎた。
もとはと言えば 父が和綴の芳名録や、スケッチブックを作っていたという記憶から。 好みの紙を、好みの表紙で綴じて使うのは、 何とも心地の良いものだ。 今年から既成の手帳にしようかと考えていた。 実は昨年10月に、シンプルな一冊を買っていた。 手帳製作に使っていたイラストレーターの不具合や、 印刷中に起こるプリンタの不調もある。 何よりも、ちょっと面倒になったのだ。 しかし買った手帳を開いても… 何となく書き込む気がしない。 既製品の方が格段に使いやすく機能的ではあるが、 手帳を開くのも面白くない。 1ヶ月遅れではあるが、 一念発起 今年も手帳を自作することにした。 イラストレーターを使い、2021年のカレンダーを作る。 袋綴じのため、ひと月を左右に振り分けて。 唐紙(とうし)を切り、プリンターで印刷する。 藍染めの表紙は、三年前からの使い回しである。 一枚ずつ折って、赤い絹糸で綴じ、落款を押して完成である。 今年は、私よりはるかに上手く綴じる妻にやってもらった。 キャンバス生地を表紙にした妻の手帳も、もちろん自家製である。 竹の繊維を漉いた唐紙は、繊維が粗く扱いにくい。 しかし何ともいえない味がある。 これでまた一年間、手帳を開くのが楽しみになった。 #
by mixturamusic
| 2021-01-31 23:38
| 音楽 自然
チャランゴ・ソロのアルバムを録音した。
完全ソロの演奏である。 7年前、私のソロ・アルバムの全てをプロデュースしてくれていた キャンディレコードの遠藤さんを亡くしてから、 慣れ親しんだペールグリーンスタジオがなくなってから、 なかなか日本での録音に気が乗らなかった。 小さなチャランゴ・コンサートが始まった。 明るく開けた里に建つ、素敵な蔵でのコンサートである。 扉を開け放ち 火鉢の炭に火を入れて お天気が晴れれば外に出て あるがままのコンサートである。 小宮さんの一言から今回の録音が始まった。 「この場所で、コンサートをしているような、そのままで…」 という妻の言葉で決心した。 蔵の空気を 炭火の香りを 里の明るさを…そして 鳥たちの歌を。 一期一会のレコーディング。 ペールグリーンスタジオで、私の音をずっと録ってくれていた平中さんに 機材持ち込みの録音をお願いした。 室内に2本のマイク。 外に向けて別のレコーダーを回す。 チャランゴの音にとても上手く答えてくれる。 絶妙な合いの手 美しいさえずり 心地よいリズム レコーディングのキューとともに 鳥たちとの会話が始まった。 鳥たちとの合奏が始まった。 演奏上の傷よりも 鳥たちとの呼吸が大切である。 人間とは違う間合い… …でもそれは 季節の間合いであり 地球の間合いであり 宇宙の間合いである。 新しいアルバムのタイトルである。 ・・・ チャランゴの音列が 鳥たちのさえずりと 杜の木立ちに飛び遊ぶ 舞い落ちる葉とともに 幹から幹へと 枝から枝へと 全6曲入り 1,500円(税別) 12月10日発売予定 #
by mixturamusic
| 2020-12-02 23:13
| フォルクローレ
巨匠カブールは
レコーディングでしばしば スタジオに居合わせた誰かに …それが音楽家であろうとなかろうと… 「録音してみる?」 と小さな打楽器を渡す。 「ほら、こんなふうに。」 「・・・・・」 「簡単だろ?」 と、お手本を鳴らして見せて 録音ブースに入れてしまう。 カブールいわく、「世界で一番危険な楽器」の『マッチ箱』。 丸いプラスチックの板に穴を開け、糸で木の実を吊るしただけの『雨の小箱』。 どちらも音楽経験がなくても 簡単に音は出せる楽器だ。 お手本のリズムも至って簡単。 演奏者はヘッドホンを耳につけ 再生音源を聴きながら 夢中でリズムを刻む… 大抵の場合 曲は最後まで行き着く事なく レコーダーは途中で止められて ブースの扉が開けられる。 カブールは笑いながら 「やっぱりいいよ」 「オレが入れるから」 「・・・・・」 巨匠が手にした小さな楽器から聞こえてくるリズムは どこかヨレて聞こえる。 遅れているようにも、走っているようにも… 「きっと録り直し…」 と思っていると カブールはコントールルームに戻ってきて 「これで大丈夫」とニッコリ。 各楽器の音量のバランスを取り直して聞くと… 本当に「これで大丈夫」なのだ。 それも絶妙の間合いで… これぞ巨匠の技!!! リズムには 『絶対リズム』と『相対リズム』がある。 『絶対リズム』とは 時計のリズムであり、メトロノームのリズムである。 『相対リズム』とは 呼吸のリズムであり、歩調のリズムであり、 動作のリズムである。 音楽においては この二つのリズムのバランスが大切である。 『絶対リズム』に制御された音楽は やはりどこかに違和感を感じる。 それは、 分刻み、秒刻みの日常に 大きなストレスを感じるのと同じである。 「私はリズム感がないんです…」 という話をよく聞く。 ・・・・・ 『リズム感がない』と思っていらっしゃるみなさん、 どうぞご安心ください。 リズム感がない人は、一人もいません。 息を合わせれば 歩調を合わせれば 結果としてリズムは合うものです。 #
by mixturamusic
| 2020-10-28 16:52
| フォルクローレ
合奏をするのに最も大切なことは
『息を合わせる』こと。 『音を合わせる』のではなく 『息を合わせる』ことで 結果的に『音が合う』のである。 少なくともフォルクローレにおいては… グループの構成員の立場は公平である。 楽器の違いはあれ 役割の違いはあれ 参加者全員の存在が 必然的に尊重される。 リズムの流れを共有する。 同じリズムの歯車に乗り 歩調を合わせて前に進む。 誰かのリズムに合わせるのではない。 全員が同じリズムで呼吸をするのである。 同じリズムの波に乗るのである。 決して急いではならない。 決して急かしてはならない。 余裕のある歩調で 余裕のある歩幅で みんな揃って前に進むのだ。 全員が完成品をイメージすること。 楽器に関係なく パートに関係なく 聞こえるはずのアンサンブルを みんなで共有し合うこと。 他のメンバーが重ねた音に 自分の音を混ぜながら より良い響きにしてゆく感覚。 楽器に関係なく パートに関係なく 全員がそれを実行すること。 社会の有り様と同じである。 時にリーダーが必要となる。 リーダーとはリードする役割を担う人。 しかし 合奏においての立場はあくまでも平等。 全ての必然がそろった時に アンサンブルは新たな命を吹きこまれる。 それが合奏の醍醐味なのである。 #
by mixturamusic
| 2020-09-24 21:49
| フォルクローレ
楽器というのは不思議なものだ。
明らかに意志がある。 明らかに生命がある。 明らかに生きている。 「今日は良く鳴ってくれるな。」 と、油断した途端 ピッタっと音が出なくなる。 (そうあることではないが) 友人の楽器を借りて弾くと 『良い音でしょう』 と、楽器は優しく微笑みかけてくれる。 それを舞台で弾こうとした途端 楽器は急に厳しい表情に変わるのだ。 『あなたの言うことなんか聞きませんよ』 とでも言うように。 私が、楽器を選んでいたのだ。 しかし、ある時気づかされた。 楽器の方が、私よりはるかに上手(ウワテ)であることに。 楽器が上手く鳴らせないのは 私が未熟だからだと。 名工たちの楽器には 時として、強烈な個性がある。 豊かな香りがある。 そして雰囲気がある。 製作家の持つ[音楽性]が 楽器が奏でる音楽に直接現れる。 時として、演奏家のそれに勝るほどに。 故・松村雅亘さんが教えてくださった。 彼の楽器を注文した直ぐあとのコンサート。 松村さんがホールまで聞きに来て下さった。 私のホールコンサートでの音を聞くために。 そして…楽屋で強く両手を握られた。 私の手のイメージを掴むために。 故・ヘルマン・リーバスが ギターの裏板を手引きのノコギリで 縦半分に切っていたのを思い出す。 これが午前中すべての仕事。 「大変だろ?」と言う私に 「タカ、これはこうするもの。」 彼は涼しい顔で即答した。 社会は楽器にもそれを求める。 より大きな音量 より弾きやすく より正確で 常に安定していて どんな環境にも対応する。 中には 何の努力もなく 上手く演奏できたフリをする機械まで出来ている。 何のための音楽か? 何のための演奏か? 何のための楽器か? 楽器には魂がある。 音楽に携わる者は 重々それを理解すべきである。 #
by mixturamusic
| 2020-08-12 16:32
| フォルクローレ
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