蒲郡の実家に帰る度に、
楽しみに立ち寄るカレー屋さんがある。 いつも美味しいカレーを作ってくれる島田くんに、 先日、こんな手紙を書いて送った。 ----- 先日も、美味しいカレーを堪能しました。蒲郡に行く日程を考える時、『サンデー・スパイスが休みでない』というのも、ひとつの条件です。 美味しいカレーをいただきながら、考えた事がありました。 一般的にレストランでは(食堂でも、ラーメン屋でも、うどん屋でもいいのですが)、シェフが腕に縒りをかけた料理が出されます。そのレシピは、研究され、工夫され、その時点では、ある意味完成されたひと品です。シェフは自信を持って、そのプレートを提供し、お客もそれを望んで行くわけです。『美味しさ』という事を真中において考えると、シェフとお客の間には、主従関係(立場の高低差)が生じます。料理を提供する側から味わう側へと、美味しさは流れるのです。 その高低差をフラットにするのが代金です。味わった料理の美味しさが、その代金と釣り合いが取れているかどうかで、客はまたその店へ行くかどうかを判断します。料理人は、再び訪れたお客に、その記憶の中にある美味しさを再現し、それを味わったお客は「うん、うん、この味、この味」と満足して帰ります。それは『完成された料理(レシピ)』と『記憶の中にある味覚に期待する気持ち』の関係で、信頼関係は深まっても、そこからの発展性はありません。 サンデー・スパイスのカレーは、いつ食べても、同じ味がしません。それでいて、いつもとびきり美味しいのです。「前回より今回の方が」とかいう、比べられるようなものではなく、いつのカレーも『唯一無二』の美味しさなのです。 カレーの仕上げに、いつも香辛料をパラパラと振りかけますよね。あの動作を見ていると、「美味しくなれ」と、おまじないをかけてくれているように感じます。そしていつも必ず美味しいのです。口の中だけでなく、自分の体だけでなく、周りの空気もみんな美味しいのです。あのおまじないの様子を見ていると、お皿の中には、いつもおまじないの入りこむ隙間があって、それを美味しく食べる事で、今日の美味しいカレーが完成するように感じます。それは、作り手から食べ手への一方通行ではなく、食べ手が美味しく食べる事で、美味しさが作り手に返される。両者の間を、美味しさがくるくる回っているような状態を感じるのです。本来の美味しさとは、そういうものではないのかな、と思います。 これは、食べ物に限った事ではありません。美しさは、元来、人が必ず持っているはずの美しさによって形作られ、それを感じられるのは、やはり受け手が持っているはずの美しさによります。美しさと、美しさとが呼応する、その間にあるのが、味覚かも、音楽かも、絵画かも、詩かもわかりません。美しさは、地球や宇宙の回転と同じに、クルクル回ります。 そんな事を、私は「ひよこ豆のキーマカレー」をいただきながら、考えていました。 サンデー・スパイスの美味しいカレーのおかげで、またひとつ、自分の扉が開いたように感じます。 美味しいカレーを、いつもありがとうございます。 SUNDAY SPICE CURRY 蒲郡市新井町14-33
by mixturamusic
| 2017-03-31 22:22
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