「今年は雨が少なくて…」 田んぼ作業の季節、 田んぼのことを尋ねられると、 こんなふうに答えていた。 実際、春先からの天候は雨が少なく、 我が田んぼの下を流れる小川には、 ほとんど水がない状態が続いていた。 5月に初めに和之さんがトラクターをかけて下さり、 なんとか苗代分の水だけ引いて、自家採取の種籾を播く。 気温の乱高下もあり、徒長気味ではあるが、田植えのための苗は育ってくれた。 「今年は雨が少なくて…」 着々と作業が進む和之さんの田んぼを横目に、 私は自身への言い訳を繰り返していた。 「こっちには全然水がねえだよ」 5年前までこの田んぼを守ってきた金一さんの言葉が思い出される。 梅雨入りまで水に不自由することは、昨年までの経験で分かっていることだ。 「今年は水が少なくて…」 福島に出発する前日、まとまった雨が降った。 「今しかない」と、雨の中、夢中で代を掻き、やっと下の三枚を田んぼにした。 小川の水の絶対量が少なく、上の三枚には水が溜まらない。 「今年は水が少なくて… 田植えは下の三枚だけになりそうだ。」 「上の三枚に水がないので、取水口をいじっておきました。」 福島滞在中に和之さんからメールが届いた。 ありがたい話。でも雨がなければ水は溜まらないだろうなあ… きれいに代が掻かれた最上段。水はしっかり溜まっている。 二段目、三段目は、まだ畑のような姿である。 下の三枚の田植えをしながら考えた。 「今年は雨が少なくて…」 翌日、たくさんの雨が降った。 また「今しかない」と、大雨の中、夢中で代を掻いた。 小川の水はみるみる増えて、田んぼに水が満ちてきた。 翌日。 スケジュールの都合上、田植えの日程は今日一日しかない。 田んぼに梯子をかけ、泥を平らにならしてから、早速田植えに取りかかった。 目の前に現れた小さなカエルが、急に歌を歌いだした。 「歌は、こうやって歌うのよ」 カエルが教えてくれているような、美しく、力強い歌である。 今年もなんとか田植えができた。 初夏の風景ができた。 この安堵の気持ちは格別だ。 不出来な私の田んぼ作業に いつも手を差し伸べて下さる和之さん、 本当にありがとうございます。 「今年は雨が少なくて…」 「そんなこと言っちゃぁ、お天道様に叱られらぁ。」 これも金一さんの言葉。 『農とは、お天道様の都合に人間が合わせるということ』 今年の田植えでも、またたくさんのことを学ばせていただいた。
by mixturamusic
| 2017-06-27 18:09
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