ラパスの町の、ロドリゲス市場の朝は早い。 まだ暗いうちから、バスやトラックで荷物が運ばれる。 ひと抱え以上ある大きな包みが下ろされると、 荷運びの人足カルガドールが、その包みをいくつも背負い、 荷主のうしろについて、それぞれの売場まで運んでゆく。 荷主は、売り場の近くに預けてある日傘を組み立て、 見栄えよく、自分の商い物を並べてゆく。 野菜も、果物も、チーズも、鶏肉も、 彩り豊かに、 形よく、 分かりやすく、 美味しそうに並べてゆく。 日が昇り切ったころ、市場は最も賑やかだ。 新聞売りの少年の声が響き、 朝ご飯に、リャウチャを売り歩くチョリータの声も負けてはいない。 買い物客を呼び止める売り子の声。 日が高くなる頃に現れる、アイスクリーム売りのラッパホーンの音。 食料品に日用品。 ありとあらゆる物が商われるロドリゲス市場は、 常に活気に満ちている。 お昼も少し過ぎて、そろそろ売り場を片付ける人もいる時間、 アコーディオンの音が聞こえてきた。 ロドリゲス市場の、いちばん東の端の方でアコーディオンを弾く、 盲目の音楽家がいた。 次から次へと、ボリビアの民謡、舞曲を奏でてゆく。 彼の足下には木箱がひとつ。 コインが入る溝が切ってある。 しばらく聞き入ったあと、木箱にコインをいくつか入れると、 チャリンという音がした。 『Muchas Gracias!』 一瞬弾く手を止めてから、またすぐ続きから弾き始めた。 アコーディオン弾きの姿は、 ロドリゲス市場の一部となっていた。 その彼の奏でる音楽も、 ロドリゲス市場の音になっていた。 市場と共に、毎日が繰り返されるそれぞれの日常。 日々の暮らしとともにある、 生命の営みである。 日々の暮らしの連続は、 生命の証しである。 日々の暮らしの中にこそ、 健全な美しさが満ちている。 私の奏でる音楽も、 …いつでも、どこでも、 地球の傾き加減を感じながらの、 日々の暮らしのひとコマであり続けたい。
by mixturamusic
| 2017-09-21 22:27
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