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美しい風景の継承〜新たな結の形
 棚田での稲作の喜びは、美味しいお米の収穫以上に、四季折々の風景を創ることにある。

 春、苗代にきれいに出揃った苗。水を張った田んぼに映る色とりどりの空や山。きれいに植えられた稲の葉は夏風にそよぎ、穂は花をつけ頭を垂れ、やがて秋の虫の音とともに黄色く色づいてゆく。収穫の季節、稲がハザに掛けられた棚田の様子は、田植え直後の景色とともに、まさに日本の里山の風景である。
 田んぼはまた、たくさんの命を育んで来た。カエルやイモリ、ヘビや沢ガニ、ホタルやトンボなど、たくさんの生き物たちが、田んぼの中に棲んでいる。それらを狙う鳥や動物にとっても、棚田は大切な生活の一部である。

 人が耕作することで、山も里も美しく輝く。農業…人が昔から、食べるために行なって来たこの行為は、回りの生命も育んで来た。
 古来農業は、森羅万象とともに歩んで来たものだ。自然の摂理に逆らわず、天にも地にも感謝して、その恵みをありがたくいただく。農作業には、先人の知恵や智慧、技術やノウハウ、そして生きて行くための哲学に溢れている。 近年、効率を求めすぎるがあまり、利便性を追求するがあまり、先人たちの営みの歴史を忘れつつある。一度途絶えてしまった伝承を、ふたたび繋ぎ直すのは困難だ。かつての技術を身につけた農の達人たちが、もう農作業に耐えられない年齢になっている。

 国道349号線、川俣町大綱木から、二本松市東和を通り田村市に抜ける風景が大好きである。緩やかな傾斜のあちこちに、美しい田んぼが続く。左右の小山の裾には、かつて棚田であったはずの不耕作地が、至る所に散見される。
 農業の大変さや経済効率の悪さに、息子たちに農業を次がせない農家が多い。ましてや大きな農機も入らない、また収穫率も良くない棚田は、真っ先に切り捨てられて行く。しかし、棚田の風景の美しさを知る身としては、また農作業の大変さだけでなく、その魅力も、棚田復元の方法も知る身としては、元の風景に戻したい衝動に駆られる。

 先月、カラムシ織の里、昭和村を訪れた。トタンを被せた茅葺きの屋根が軒を連ね、しっかりと刈り込まれた畦に囲まれた田んぼの中に、分げつを始めた苗が風に揺れている。美しい村である。伝えるべき伝承を大切にして、今に生きる風景に、大きな力と安心を感じた。しかしここにも、超高齢化の波は押し寄せている。

 少子高齢化社会においては、相続関係のみで農地を維持する事は不可能である。地権はそのままにしても、農作業の出来る人たちの力によって、土地を生かして行く方法を模索せねばなるまい。現代の形の『結』が必要だ。

 今こそ、農業を志す人たちが、先人たちの知識や技術に学び、誰のものでもない普遍的な美しい風景を、次の世代に伝えて行かなければならない。美しき福島…震災後、幾多の困難に直面する農業県福島だからこそ、その可能性を強く感じる。
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by mixturamusic | 2015-07-11 07:02



  木下 尊惇 
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