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美しさに育まれた命
初めて福岡県東峰村の小石原を訪ねたのは、2013年の初夏であった。
そのすぐあとに、丹沢ドン会の会報に、こんな文章を書いた。
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(前略)
 先日、福岡県東峰村の小石原(こいしわら)に行って来ました。大分県境にほど近い小石原は、17世紀から続く焼き物の里としても知られています。大分道を下り、『やきもの街道』と呼ばれる山間の道を東峰村に入った頃から、道の両側に棚田が現れました。狭い面積の田んぼはすべて小さな石を積み組んだ石垣で段々に仕切られ、細い流れから取り込んだ水が、上から順番に掛け流されていました。小石原まで20km以上の山道沿いに、小さな棚田群はずっと続いているのです。
「このあたりの窯元も、もとはみんな田んぼや畑をやりながら、焼き物を焼いていたんです。今でも、自分のところで食べるくらいは作りよりますよ。」
小石原焼を代表する名工、故太田熊夫さんの跡取り孝宏さんの奥様が、笑いながらおっしゃっていました。
 『やきもの街道』沿いの棚田は、とても手入れの行き届いた田んぼばかりでした。機械の入らない小さな耕作地、形も大きさも様々です。それぞれに別々の家が耕作しているに違いありません。にもかかわらず、不思議なまでの統一感。まさに伝統的風景の美しさです。

 人々は、その土地々で生きるために、さまざまな工夫を重ね、いろいろな技術を編み出して来ました。その技術の中には、道具や決まり事、更に言えばものの考え方…哲学も含まれます。それはすなわち、哲学…生きるための工夫…が、技術を生み出して来たとも言えるでしょう。一般的に、それらを総称して『文化』と呼んでいます。よく「文化は人々の生活の中で生まれて来た」と解釈されていますが、それよりも「文化が人々を生かして来た」と言い換えた方が的確ではないでしょうか?

 『伝統的風景の美しさ』は、『伝統文化の継承・実践』によってのみ成り立ちます。そこには生きるための智慧が充満し、生きるための美しさがいっぱいに現れています。農作業は言うまでもなく、生きるための働きです。伝統的農業が継承された風景が美しいのは、『生きるための美しさ』なのです。

--------(2013.8.4.美しい風景とは その2)
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時を同じくして、九州に行く機会があれば立ち寄るようになったのが、
日田市源栄町の小鹿田焼きの里である。

昨年5月、小鹿田から山道を通って東峰村に抜けた。
途中、それこそ昔話に出てきそうな集落がいくつもあり、
その美しさに、幾度となく車を下りて辺りを散策した。

山間に点在する家々の脇には、必ず小川が流れている。
清らかな水が流れている。
生活のための水。
田畑のための水。
命を繋ぐ水。
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その水が、たくさんの命を奪ってしまった。
生活のための水が、たくさんの人たちの生活の場を破壊してしまった。
棚田を満たすはずの水が、多くの棚田を壊してしまった。

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地形をも変えてしまうような豪雨の残した爪痕に、
その復旧は気の遠くなるような作業に違いない。

それでも…
この大らかな山間の美しさに育てられた、
たくさんの命に思いを馳せて、
どうか美しさを美しさのままで、
美しい暮らしを取り戻して下さい。

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美しさに育まれた命こそ、
美しさに溢れる、平和な未来の糧なのです。




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by mixturamusic | 2017-07-13 22:45



  木下 尊惇 
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