色ソメツ、心ソメツ
故郷蒲郡への道すがら、
藤枝のギャラリー侘助に、個展初日の山内武志さんを訪ねた。

「これから蒲郡ですか? それとも今からお帰り?」
少し驚いた顔をしながら、いつものように温かく迎えて下さった。
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山内さんの作品は、どれも温もりが溢れている。

「染め物はね、気持ちさえあれば誰にでもできる仕事なんですよ。」
「僕がそんなこと言うと『技術を馬鹿にするのか!』ってすぐに叱られちゃう。」
「でもね、昔から決まったことを、ただその通りにやっているだけだから…お箸だって昔の人が考えて教えてくれたから、当たり前に使えているわけで、染め物だって、自分が新たに考えたことなんて、そう滅多にはないですよ。」
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若かりし日の山内さんは、家業の染物屋の仕事を覚えながら、型染めの人間国宝・故芹沢銈介氏の工房に入り修行、晩年の芹沢氏が、最も頼りにしていた弟子のひとりである。

「それでもね、いつまでこの仕事が続くか…」
「昔からの材料がもう手に入らない。染料も、脱脂した糠も、突然手に入らなくなるんだよ。」
「なくなる事が分かっていれば、二生分くらいは買っといたんだけどなぁ。」
「まぁそのうち、江戸時代みたいに、グレイと茶色だけになっちゃっても面白いんだけどね。」
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浜松の工房に伺うと、山内さんは必ず働いている。

「今日もこれから帰って、ちょっとやっておかなきゃいけない仕事があってね。」
「明日は晴れるから、今日のうちにやっておけば、朝までには乾くでしょ?」

全ての工程を、ひとり手作業でこなされる山内さん。

師・芹沢銈介の心が、山内武志さんの命に生きている。
柳宗悦の心偈(こころうた)『色ソメツ、心ソメツ』が、
山内さんの仕事に生きている。






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by mixturamusic | 2018-03-25 00:15
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  木下 尊惇 
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