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作曲するということ
サガルナガ講習会の第二週目に
『作曲コンクール』というのがある。

月曜日に作曲を始めて、
アンサンブルの場合には共演者を探し、
木曜日の夜に発表する、というものだ。

一応コンクール形式になっていて、
毎年一位と二位を決めるが、それは言わばご愛嬌。
今年も17曲が新たに発表された。
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私も昨年に続き参加した。
昨年の曲は『Pas de Moisdon』
『モワドンの歩み』という新たな形式を提案した。

今年の曲は『À l'ombre du pommier~リンゴの樹の木陰で』
ボリビアのポルカの曲である。

ポルカという形式を選んだのは…
その日の午前中の講習で、カルナバリートとポルカの違いを教材にしたこと。
そして、それにたくさんの質問が寄せられたこと。
作曲コンクールで、創意工夫を凝らせ過ぎた曲が多い中、
メロディーの美しさを問う曲にしたかったこと。

共演者には、クロアチアから始めて参加したケーナのZRINKAと、
ボリビア生まれのフランス人、バイオリンのMAGALIにお願いをした。
この二人の音色が、この曲のメロディーにピッタリときたからである。
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演奏順は任意のくじ引きである。

今年の一曲目は、ANTOINEの『Aire, fuego, agua y tierra』
『空気、炎、水、そして大地』

・・・・
昨年彼はアルゼンチン・サンバの曲を発表した。
月曜日から熱心に曲を作り始め、
何度も、何度も助言を求められた。
CESAR DOMINGUEZと共に、本番でのサポートも引き受けた。

昨年のANTOINEは、懸命に『新しい曲』を『作る』ことをしていた。
形式を選び、今までに彼が聞いたことのない音を探すために、彷徨っていた。

演奏後、「マエストロ、如何でしたか?」という彼の問いに、
「きれいなメロディーができたね。でもちょっと複雑すぎるかな?」

これをCESARが覚えていた…

C.「今年のANTOINEの曲、素晴らしかったね。」
T.「うん、曲にも演奏にも、とても感動したよ。」
今年の作曲コンクール翌日の、お昼ご飯でのCesyとの会話…

今年はコンクール前日に、ANTOINEに詩を見せられた。
「これをどう思いますか?」

『Aire, fuego, agua y tierra』…
6月に見送ったばかりの亡き父に贈る言葉が、スペイン語で連ねられている。
美しい、シンプルな詩である。

「言うことないよ、ANTOINE…」
「ここにどんなメロディーを重ねようとも、良いものが生まれるに決まっている。」

JEANとMICHELEを共演者に選んだ演奏は…真に素晴らしかった。
淡々とした演奏、そして歌。
ANTOINEの心が、魂が解放された瞬間である。

「ANTOINE、おめでとう!とても良かったよ‼︎」

その夜、とても陽気に嬉しそうにはしゃいでいたANTOINEの姿が、
全てを物語っている。
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作曲という行為は、自分を鏡に映すことでもある。
自分の内面を鏡に映すことは恐ろしい。
自分を映す鏡があれば、
そして自分をそこに映す覚悟があれば、
誰にでも作曲はできる。

新たなメロディーを探すことは、
作曲のほんの一部分にしか過ぎない。
メロディーや技法を単に弄んだものには、
何ら魅力を感じない。

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作曲という行為は、
生命を削りながら
生命を昇華させる行為である。


こうして生まれた曲たちは、
生まれたその時から
自らの足で歩き始める。



by mixturamusic | 2019-09-07 11:41
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  木下 尊惇 
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