楽器というのは不思議なものだ。
明らかに意志がある。 明らかに生命がある。 明らかに生きている。 「今日は良く鳴ってくれるな。」 と、油断した途端 ピッタっと音が出なくなる。 (そうあることではないが) 友人の楽器を借りて弾くと 『良い音でしょう』 と、楽器は優しく微笑みかけてくれる。 それを舞台で弾こうとした途端 楽器は急に厳しい表情に変わるのだ。 『あなたの言うことなんか聞きませんよ』 とでも言うように。 私が、楽器を選んでいたのだ。 しかし、ある時気づかされた。 楽器の方が、私よりはるかに上手(ウワテ)であることに。 楽器が上手く鳴らせないのは 私が未熟だからだと。 名工たちの楽器には 時として、強烈な個性がある。 豊かな香りがある。 そして雰囲気がある。 製作家の持つ[音楽性]が 楽器が奏でる音楽に直接現れる。 時として、演奏家のそれに勝るほどに。 故・松村雅亘さんが教えてくださった。 彼の楽器を注文した直ぐあとのコンサート。 松村さんがホールまで聞きに来て下さった。 私のホールコンサートでの音を聞くために。 そして…楽屋で強く両手を握られた。 私の手のイメージを掴むために。 故・ヘルマン・リーバスが ギターの裏板を手引きのノコギリで 縦半分に切っていたのを思い出す。 これが午前中すべての仕事。 「大変だろ?」と言う私に 「タカ、これはこうするもの。」 彼は涼しい顔で即答した。 社会は楽器にもそれを求める。 より大きな音量 より弾きやすく より正確で 常に安定していて どんな環境にも対応する。 中には 何の努力もなく 上手く演奏できたフリをする機械まで出来ている。 何のための音楽か? 何のための演奏か? 何のための楽器か? 楽器には魂がある。 音楽に携わる者は 重々それを理解すべきである。
by mixturamusic
| 2020-08-12 16:32
| フォルクローレ
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