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カテゴリ:フォルクローレ( 5 )
合奏するということ その2
巨匠カブールは
レコーディングでしばしば
スタジオに居合わせた誰かに
…それが音楽家であろうとなかろうと…
「録音してみる?」
と小さな打楽器を渡す。

「ほら、こんなふうに。」
「・・・・・」
「簡単だろ?」
と、お手本を鳴らして見せて
録音ブースに入れてしまう。
合奏するということ その2_c0357413_15462246.jpg

カブールいわく、「世界で一番危険な楽器」の『マッチ箱』。
丸いプラスチックの板に穴を開け、糸で木の実を吊るしただけの『雨の小箱』。
どちらも音楽経験がなくても
簡単に音は出せる楽器だ。
お手本のリズムも至って簡単。

演奏者はヘッドホンを耳につけ
再生音源を聴きながら
夢中でリズムを刻む…

合奏するということ その2_c0357413_15465083.jpg

大抵の場合
曲は最後まで行き着く事なく
レコーダーは途中で止められて
ブースの扉が開けられる。

カブールは笑いながら
「やっぱりいいよ」
「オレが入れるから」
「・・・・・」
合奏するということ その2_c0357413_15462600.jpg

巨匠が手にした小さな楽器から聞こえてくるリズムは
どこかヨレて聞こえる。
遅れているようにも、走っているようにも…

「きっと録り直し…」
と思っていると
カブールはコントールルームに戻ってきて
「これで大丈夫」とニッコリ。

各楽器の音量のバランスを取り直して聞くと…
本当に「これで大丈夫」なのだ。
それも絶妙の間合いで…

これぞ巨匠の技!!!
合奏するということ その2_c0357413_15460958.jpg

リズムには
『絶対リズム』と『相対リズム』がある。

『絶対リズム』とは
時計のリズムであり、メトロノームのリズムである。
『相対リズム』とは
呼吸のリズムであり、歩調のリズムであり、
動作のリズムである。

音楽においては
この二つのリズムのバランスが大切である。

『絶対リズム』に制御された音楽は
やはりどこかに違和感を感じる。
それは、
分刻み、秒刻みの日常に
大きなストレスを感じるのと同じである。

合奏するということ その2_c0357413_15465840.jpg

「私はリズム感がないんです…」
という話をよく聞く。
・・・・・
『リズム感がない』と思っていらっしゃるみなさん、
どうぞご安心ください。
リズム感がない人は、一人もいません。
息を合わせれば
歩調を合わせれば
結果としてリズムは合うものです。





by mixturamusic | 2020-10-28 16:52 | フォルクローレ
合奏するということ その1
合奏をするのに最も大切なことは
『息を合わせる』こと。
『音を合わせる』のではなく
『息を合わせる』ことで
結果的に『音が合う』のである。

少なくともフォルクローレにおいては…
グループの構成員の立場は公平である。
楽器の違いはあれ
役割の違いはあれ
参加者全員の存在が
必然的に尊重される。
合奏するということ その1_c0357413_20561537.jpeg
リズムを合わせるためには
リズムの流れを共有する。
同じリズムの歯車に乗り
歩調を合わせて前に進む。

誰かのリズムに合わせるのではない。
全員が同じリズムで呼吸をするのである。
同じリズムの波に乗るのである。

決して急いではならない。
決して急かしてはならない。
余裕のある歩調で
余裕のある歩幅で
みんな揃って前に進むのだ。
合奏するということ その1_c0357413_20561408.jpg
まとまったアンサンブルにするためには
全員が完成品をイメージすること。
楽器に関係なく
パートに関係なく
聞こえるはずのアンサンブルを
みんなで共有し合うこと。

他のメンバーが重ねた音に
自分の音を混ぜながら
より良い響きにしてゆく感覚。
楽器に関係なく
パートに関係なく
全員がそれを実行すること。
合奏するということ その1_c0357413_20561294.jpg
アンサンブルは持ちつ持たれつ。
社会の有り様と同じである。

時にリーダーが必要となる。
リーダーとはリードする役割を担う人。
しかし
合奏においての立場はあくまでも平等。

全ての必然がそろった時に
アンサンブルは新たな命を吹きこまれる。

それが合奏の醍醐味なのである。
合奏するということ その1_c0357413_20561235.jpg

by mixturamusic | 2020-09-24 21:49 | フォルクローレ
楽器の話 その1
楽器というのは不思議なものだ。
明らかに意志がある。
明らかに生命がある。
明らかに生きている。

「今日は良く鳴ってくれるな。」
と、油断した途端
ピッタっと音が出なくなる。

(そうあることではないが)
友人の楽器を借りて弾くと
『良い音でしょう』
と、楽器は優しく微笑みかけてくれる。
それを舞台で弾こうとした途端
楽器は急に厳しい表情に変わるのだ。
『あなたの言うことなんか聞きませんよ』
とでも言うように。
楽器の話 その1_c0357413_15280391.jpg
かつて私は、楽器を選んでいた。
私が、楽器を選んでいたのだ。

しかし、ある時気づかされた。
楽器の方が、私よりはるかに上手(ウワテ)であることに。
楽器が上手く鳴らせないのは
私が未熟だからだと。

名工たちの楽器には
時として、強烈な個性がある。
豊かな香りがある。
そして雰囲気がある。

製作家の持つ[音楽性]が
楽器が奏でる音楽に直接現れる。
時として、演奏家のそれに勝るほどに。
楽器の話 その1_c0357413_15280514.jpg
「楽器の製作はイメージですよ」
故・松村雅亘さんが教えてくださった。
彼の楽器を注文した直ぐあとのコンサート。
松村さんがホールまで聞きに来て下さった。
私のホールコンサートでの音を聞くために。
そして…楽屋で強く両手を握られた。
私の手のイメージを掴むために。

故・ヘルマン・リーバスが
ギターの裏板を手引きのノコギリで
縦半分に切っていたのを思い出す。
これが午前中すべての仕事。
「大変だろ?」と言う私に
「タカ、これはこうするもの。」
彼は涼しい顔で即答した。
楽器の話 その1_c0357413_15280506.jpg
何でもかんでも利便性を求める世の中
社会は楽器にもそれを求める。

より大きな音量
より弾きやすく
より正確で
常に安定していて
どんな環境にも対応する。

中には
何の努力もなく
上手く演奏できたフリをする機械まで出来ている。

何のための音楽か?
何のための演奏か?
何のための楽器か?
楽器の話 その1_c0357413_15291723.jpeg
楽器には心がある。
楽器には魂がある。
音楽に携わる者は
重々それを理解すべきである。





by mixturamusic | 2020-08-12 16:32 | フォルクローレ
太陽を見よ。雨音を聞け。

二度寝の夢現の中、声なき声を聞いた。
「太陽を見よ。」

布団から出て障子を開けると、外は雨。
山は雲の塊を纏っている。

降り頻る雨の線が呟いた。
「雨音を聞け。」

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14521117.jpg

コロナ、コロナの毎日は、
視界を狭め、目線を縮める。
聴覚は言葉にだけ研ぎ澄まされ、
疑心暗鬼が膨らみ続ける。

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14345209.jpg

キャンプの後に我が家に寄ってくれたリョウちゃんが
四つ葉のクローバーを二つ
プレゼントしてくれた。

お昼に食べたラーメン屋さんの駐車場で見つけたのだそう。

クローバーの葉っぱは、夜になると眠りにつく。
LEDの灯がついていても、首を垂れて眠りにつく。

朝、ネコに起こされ居間に下りると、
首をもたげて「おはよう」と
緑の葉っぱが微笑んでくれる。

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14345403.jpg

人間は、
大きな大きな宇宙の中で、
クルクル回る銀河系の
そのまた中でクルクル回る
太陽系の中の
そのまた中でクルクル回る地球の上で、
クルクル回る時とともに生まれ、
クルクルクルクル大きく回る
宇宙の巡りに生かされてきた。

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14345049.jpg

時として
厳しく照りつける太陽は
生きとしいけるものたちを育み、
時として
激しく地上に注ぐ雨粒は
生きとしいけるものたちを潤す。

暑さの中に吹き抜ける風の
なんと心地よいことか!

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14344881.jpg

「太陽を見よ。」
「月を、星を見よ。」
「雨音を聞け。」
「風音を聞け。」

ツバメが飛んでいる。
今年の巣作りのための泥を求めて
田んぼの上を
空き地の上を。







by mixturamusic | 2020-04-02 15:23 | フォルクローレ
宇宙の中での、音楽家としての立ち位置

画家・中川一政(1893~1991)に
「草となって草を描く時、
 草が見えた時、
 画家は自然と融合する。」
という言葉がある。

これが音楽家であれば、
「風となって風を奏でる時、
 風が聞こえた時、
 音楽家は自然と融合する。」
とでもなろう。
『風』は『波』でも『鳥のうた』でも何でも良い。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21560669.jpeg


壁と対峙する。
古い土壁と対峙する。
壁はただどっしりと、何も語らず…

私の生命と壁の存在が重なったとき
壁と私は一枚になる。
壁の発する
静かな音が聞こえてくる。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21372634.jpeg


レンヌの街並み。
古い建物が軒を連ねる。

傾斜のきつい三角屋根から、
空に向けて煙突が口を開ける。

どんな家かは知らない。
誰の家かも知らない。

ただ
その煙突の口から吐き出されるであろう
煙の香りに想像が至ったとき、

その家にいるかもしれない
小さな女の子の口ずさむうたが聞こえてくる。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21373292.jpeg


人間は自然(じねん)の一部である。
森羅万象の一部である。

地球が自転をするように、
地球が公転をするように、
銀河が、宇宙が、回り、巡るように、
私たちの生命も回り、そして巡る。
…万物は、有形、無形を問わず、
宇宙の回転と共に回り続ける。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21373855.jpeg


宇宙の巡りと一体化したときに、
自ら奏でる音たちも、
宇宙の奏でる音となる。
この世の法則の中で、
しかしこの世の法則を貫いて、
天地に響く音となる。


これが
宇宙の中での、音楽家としての、
私の立ち位置である。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21374221.jpeg




by mixturamusic | 2020-02-12 22:37 | フォルクローレ



  木下 尊惇 
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