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考える生きものたち

ある夜、東松山IC入口間近かの道を運転していると、
フロントガラスにカミキリムシが落ちてきた。
故意か否か、木の枝から落下して、走行中の車に着地した。
おそらく想像していた足場とは違い滑りやすく、
前方からは強い風圧が絶え間なく当たる。
ちょっと困惑した様子のカミキリムシだが、
すぐにピタッと動かなくなった。
身体を低くして、風の抵抗を避けているようだ。

ETCを通過するためにスピードを緩めると、
突然カミキリムシが動き出した。
そして一瞬止まって首を傾げたように見えた後、
フロントガラスの端の方へ助走をつけて、
無事に夜の空へと飛び立った。
・・・・・・・・
フロントガラスに落下してから飛び立つまで、
明らかに、カミキリムシは考えていた。
自分がより良く生き残るため、
わずかな時間に最善の方法を模索していた。
だから車のスピードが落ちたチャンスを逃さずに、
無事に飛び立つことができたのである。

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八ヶ岳の友人からもらったミントの苗。
小さなひと株を庭に植えると、
グングン背丈を伸ばして成長した。

ある雨の日、
気がつくとミントが倒れていた。
中心から外側に向けてパタリと倒れていた。
背丈に比べて茎が細く葉っぱも大きい。
徒長気味だったからか…と思いきや、
全ての葉っぱがすぐに上を向いた。
『自分は元からこういう形でしたよ』という顔をして。
倒れる前に比べると、
ミントの占有面積は何倍にも広くなっている。
・・・・・・・・
庭に植えられてから十分な背丈に成長するまで、
明らかに、ミントは考えていた。
世代をまたがずに、
自分の株面積を大きくする方法を。
だから雨で十分湿った土の上に、
わざと我が身を横たえられたのである。

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人間は、人間だけが考える生き物だと思っている。
少なくとも、考えることにかけては、
抜きん出て優秀だと思っている。

人間よ、
自惚れてはいけない。

全ての生命は考えている。
動物、鳥、虫、植物から、
おそらく微生物にいたるまで、
みんなそれぞれ考えている。

おそらく人間より緻密にシビアに
生命の次元で考えている。

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考える目的は、『より良くいきる』が基本である。
場合によっては『個体の生き残り』より
『種の繁栄』が優先する場合もあるかもしれない。
それは未来につながるための思考、思索である。

生きるための思考によって起こされる行動は、
その全てが美しい。
色も形も音も所作も…

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人間はより良く生きるために考えているだろうか?
ひとりひとりが、
より良い未来のために考えて行動しているだろうか?

人間は、
人間を取り巻く全てから、
その存在意義を試されている。

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# by mixturamusic | 2020-06-28 12:44 | 音楽 自然
太陽を見よ。雨音を聞け。

二度寝の夢現の中、声なき声を聞いた。
「太陽を見よ。」

布団から出て障子を開けると、外は雨。
山は雲の塊を纏っている。

降り頻る雨の線が呟いた。
「雨音を聞け。」

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14521117.jpg

コロナ、コロナの毎日は、
視界を狭め、目線を縮める。
聴覚は言葉にだけ研ぎ澄まされ、
疑心暗鬼が膨らみ続ける。

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14345209.jpg

キャンプの後に我が家に寄ってくれたリョウちゃんが
四つ葉のクローバーを二つ
プレゼントしてくれた。

お昼に食べたラーメン屋さんの駐車場で見つけたのだそう。

クローバーの葉っぱは、夜になると眠りにつく。
LEDの灯がついていても、首を垂れて眠りにつく。

朝、ネコに起こされ居間に下りると、
首をもたげて「おはよう」と
緑の葉っぱが微笑んでくれる。

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14345403.jpg

人間は、
大きな大きな宇宙の中で、
クルクル回る銀河系の
そのまた中でクルクル回る
太陽系の中の
そのまた中でクルクル回る地球の上で、
クルクル回る時とともに生まれ、
クルクルクルクル大きく回る
宇宙の巡りに生かされてきた。

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時として
厳しく照りつける太陽は
生きとしいけるものたちを育み、
時として
激しく地上に注ぐ雨粒は
生きとしいけるものたちを潤す。

暑さの中に吹き抜ける風の
なんと心地よいことか!

太陽を見よ。雨音を聞け。_c0357413_14344881.jpg

「太陽を見よ。」
「月を、星を見よ。」
「雨音を聞け。」
「風音を聞け。」

ツバメが飛んでいる。
今年の巣作りのための泥を求めて
田んぼの上を
空き地の上を。







# by mixturamusic | 2020-04-02 15:23 | フォルクローレ
宇宙の中での、音楽家としての立ち位置

画家・中川一政(1893~1991)に
「草となって草を描く時、
 草が見えた時、
 画家は自然と融合する。」
という言葉がある。

これが音楽家であれば、
「風となって風を奏でる時、
 風が聞こえた時、
 音楽家は自然と融合する。」
とでもなろう。
『風』は『波』でも『鳥のうた』でも何でも良い。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21560669.jpeg


壁と対峙する。
古い土壁と対峙する。
壁はただどっしりと、何も語らず…

私の生命と壁の存在が重なったとき
壁と私は一枚になる。
壁の発する
静かな音が聞こえてくる。

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レンヌの街並み。
古い建物が軒を連ねる。

傾斜のきつい三角屋根から、
空に向けて煙突が口を開ける。

どんな家かは知らない。
誰の家かも知らない。

ただ
その煙突の口から吐き出されるであろう
煙の香りに想像が至ったとき、

その家にいるかもしれない
小さな女の子の口ずさむうたが聞こえてくる。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21373292.jpeg


人間は自然(じねん)の一部である。
森羅万象の一部である。

地球が自転をするように、
地球が公転をするように、
銀河が、宇宙が、回り、巡るように、
私たちの生命も回り、そして巡る。
…万物は、有形、無形を問わず、
宇宙の回転と共に回り続ける。

宇宙の中での、音楽家としての立ち位置_c0357413_21373855.jpeg


宇宙の巡りと一体化したときに、
自ら奏でる音たちも、
宇宙の奏でる音となる。
この世の法則の中で、
しかしこの世の法則を貫いて、
天地に響く音となる。


これが
宇宙の中での、音楽家としての、
私の立ち位置である。

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# by mixturamusic | 2020-02-12 22:37 | フォルクローレ
はしまや『子歳』コンサートで

夢空間『はしまや』がオープンして間もない頃、
米蔵の建物に惚れ込んで、24年シリーズ・コンサートを企画した。
13年かけて季節を一巡りしたあとは、
7年前の未歳を先頭に、今は干支シリーズを続けている。
はしまや『子歳』コンサートで_c0357413_22070747.jpg

干支に因んだコンサートなら…と、毎年正月明けの土曜日に、という事で、
今年は1月4日…私の誕生日と重なった。

正面に父の絵を掛け、
妻が会場を飾り付け、
高柴デコ屋敷・橋本廣司さんの三春張子の干支と、
丹沢山中・札掛に暮らす広石幾さんの干支クッキーで、
今年もみなさんをお迎えした。
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コンサートを始めた当初から会場に生ける花は、
倉敷の『すみれ』花屋さんにお世話になっている。

『すみれ』花屋の高橋洋子さんは、
フラワーアレンジメントで世界的に知られたお一人である。
彼女は毎年夜のコンサートに参加され、
いつも静かに、伏し目がちに、
音楽を通じて、空間と対話されるように聞いて下さる。
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昨年フラワーアレンジメントの世界大会で、
オーストラリア出身のお弟子さんバート・ハサン氏が優勝されたのだそうだ。
夢空間のオーナーの楠戸恵子さんに促されて、
演奏前に、会場のみなさんに話して下さった。

「バートくんはうちに来た時から、私の手伝いをしてくれて…」
「私は気が変わりやすくて、
 その時にいいと思っても、翌日には変わっていたり…」
「それでもバートくんは嫌な顔一つせず、
 私が『いいよ』って言うまで直してくれて…」
「昨年の大会には行けませんでしたが、
 大会の映像でバートくんの姿を久しぶりに見て…」
「彼の手がとてもゴツゴツしていて…」
「うちにいた時よりもうんとゴツゴツしていて…」
「オーストラリアに帰ってからも、本当にいい仕事をして来たんだなって…」
「私は本当に感激しました。」
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コンサートの曲間に…

私はボリビアに向かう飛行機の中で隣り合った
アメリカ人の老夫婦の話をした。
手がゴツゴツとした、背筋が伸びたご夫婦の話を…

生けた花が
自分で姿を整える話をした。
そしてそれは、人の目にも美しく映るということを…
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終演後、
高橋洋子さんが側にいらっしゃって、そっと話して下さった。
「私もこの年齢になり、自分の教室のひとつを辞めようと思っていたんです。」
「でも、今日のコンサートを聞かせていただいて…」
「私にも、まだまだ若い人たちに伝えなくてはならないことがあるなって…」
「そう思えたので…」
「まだ頑張ることに決めました。」

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私にとっても
忘れられない誕生日のコンサートとなった。



# by mixturamusic | 2020-01-28 23:07 | 音楽
オルセー美術館にて
ルーブル美術館の翌日、今度はオルセー美術館を訪れた。
いくら絵が好きな私でも…いや好きだからこそ、
美術館のハシゴなどしたことがない。
それも前日のルーブルで、かなり消耗しているのだが…
せっかくのパリ滞在、Rogerも付き合ってくれるというので、
改めて案内をお願いした。
オルセー美術館にて_c0357413_21380794.jpg
かつての駅を改装したというオルセー美術館、
開館は1986年12月だそうだ。
雨が降りそうな寒空の下、20分ほど並んで入場した。

自然光を取り入れた地上階には、彫刻作品がずらりと並ぶ。
やはり圧倒される質と量である。
作品を見るというよりも、作品の間を散策するという感覚。

中学生か、高校生か、学校の授業であろう、大勢で作品の模写に来ていた。
思い思いの作品の前で、スケッチブックに鉛筆を走らせる。
彫刻の前でスケッチする女性の線の動きに驚いて姿を見ると…
やっぱりもっと年上…画学生だろうか?

ルーブルほどではないが、ここオルセーにも小部屋がたくさんあって、
それぞれの部屋に素晴らしい作品が並べられている。
『作品に酔ってしまいそう…』
というのが正直なところである。
オルセー美術館にて_c0357413_22162876.jpg
オルセー美術館は、印象派の名作が多いことで知られる。
地上階の作品(地上階にも印象派の作品はあるが)の鑑賞に疲弊して上層階に行くと、
そこに陳列されている作品のちからに、本当にダウンさせられる。
窓から見えるセーヌ川やモンマルトルの丘が清涼剤にはなるが…

ちなみにここの美術館も順路なるものはなく、
いつでも好きな絵の前に戻れるのがうれしい。
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ゴッホの絵の前で大勢の子どもたちが座り話を聞いていた。
おそらく低学年の子どもたち、やっぱり学校の授業であろう。
フランスでは学生証を提示すれば、全てのミュージアムが無料になる。
雨の日の休日など「雨だから美術館にでも行こうか?」などよくある話…と聞く。
『本物を見る』『間近で見る』『身近に感じる』
羨ましい限り…とても恵まれた環境である。
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ヘトヘトになりながら最後…に近い部屋でルドンに遭遇した
美しい壁画のような作品。
まるで天国…Paraisoにいるような感覚。
心身ともに疲弊しているのに立ち去りたくない気持ち。

実に贅沢な午後を過ごさせてもらった。
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以下、あまり考えずに絵の中から切り取った場面である。
少しですが彫刻もあります。
どうぞお楽しみください。







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# by mixturamusic | 2019-12-08 22:55



  木下 尊惇 
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