色ソメツ、心ソメツ
故郷蒲郡への道すがら、
藤枝のギャラリー侘助に、個展初日の山内武志さんを訪ねた。

「これから蒲郡ですか? それとも今からお帰り?」
少し驚いた顔をしながら、いつものように温かく迎えて下さった。
c0357413_22351301.jpg

山内さんの作品は、どれも温もりが溢れている。

「染め物はね、気持ちさえあれば誰にでもできる仕事なんですよ。」
「僕がそんなこと言うと『技術を馬鹿にするのか!』ってすぐに叱られちゃう。」
「でもね、昔から決まったことを、ただその通りにやっているだけだから…お箸だって昔の人が考えて教えてくれたから、当たり前に使えているわけで、染め物だって、自分が新たに考えたことなんて、そう滅多にはないですよ。」
c0357413_22354477.jpg

若かりし日の山内さんは、家業の染物屋の仕事を覚えながら、型染めの人間国宝・故芹沢銈介氏の工房に入り修行、晩年の芹沢氏が、最も頼りにしていた弟子のひとりである。

「それでもね、いつまでこの仕事が続くか…」
「昔からの材料がもう手に入らない。染料も、脱脂した糠も、突然手に入らなくなるんだよ。」
「なくなる事が分かっていれば、二生分くらいは買っといたんだけどなぁ。」
「まぁそのうち、江戸時代みたいに、グレイと茶色だけになっちゃっても面白いんだけどね。」
c0357413_22352935.jpg

浜松の工房に伺うと、山内さんは必ず働いている。

「今日もこれから帰って、ちょっとやっておかなきゃいけない仕事があってね。」
「明日は晴れるから、今日のうちにやっておけば、朝までには乾くでしょ?」

全ての工程を、ひとり手作業でこなされる山内さん。

師・芹沢銈介の心が、山内武志さんの命に生きている。
柳宗悦の心偈(こころうた)『色ソメツ、心ソメツ』が、
山内さんの仕事に生きている。






[PR]
# by mixturamusic | 2018-03-25 00:15
アメリカ…テキサスの食べもの事情
日本とテキサスの時差はマイナス15時間。
成田を昼前に発つと、12時間のフライトでも、
ダラスにはその日の朝9時前には着いてしまう。

少し休んでから、友人の運転でオースチンへと向かった。

途中、ウエストという街で小休止。
「ここに美味しいコラーチェの店があるんだ」
コラーチェとはチェコ発祥のパンで、フルーツのジャムやチーズがのっている。
「ウエストには、たくさんのチェコ・スロバキアからの移民が住んでいてね。」
お店は行列ができるほどの大盛況、
カウンターの向こうには、東欧の顔立ちの人たちが忙しく働いている。
コラーチェ…コーヒーによく合う、甘く美味しい菓子パンである。

c0357413_21244923.jpeg

ダラスからオースチンまで3時間半、
地平線に沈む太陽を眺めながら、車は次第に街に入っていった。
オースチンはダラスの州都、文化的な活動がとても盛んだという。

「テキサスと言えばバーベキュー、
中でもここオースチンのバーベキューは一番さ。」
カウンターに並んで、付け合わせを自由に取って行く。
お皿の代わりに、クッキングシートを敷いたお盆である!
肉の重さはリブラ(約500g)単位。
私は小さな声で、1/4 lb.を注文した。

賑やかな店の中は、ビールを飲みながらバーベキューを食べる老若男女。
お盆の上を見ると、かなりのボリュームの肉やソーセージがのっている。
「テキサスサイズと言ってね…」
アメリカの中でも、テキサスは何かにつけ大きいのだそうだ。

翌日の夜、オースチンに住む友人が連れて行ってくれたドイツ料理の店。
ソーセージがとても美味しかった。
「この辺りはドイツからの移民が多くてね。」
店のカウンターの中には、ものすごい数の地ビールのコックが並んでいた。

c0357413_21252301.jpeg

サウス・ダラスにあるメキシコ人街に連れて行ってもらった。
街行く人はヒスパニック系、看板もスペイン語ばかり。
勝手にイメージする、ホコリっぽいテキサスの街並みだ。
「ここでオスワルドが捕まったんだ。」
ケネディ大統領暗殺の犯人逮捕の現場も、日常のホコリの中にとけ込んでいる。

お昼ご飯に入ったステーキハウス。
8オンスのリブロースがスペシャルランチだそうだ。
付け合わせを取って、肉の焼けるのを待つ。
差し出されたディッシュの上の、ジャガイモの大きさに驚いた。
「Oh ! Texas size !」

c0357413_21254937.jpeg

これまでアメリカの食べ物について、良い印象を持ったことがなかった。
今でも良い印象は持っていない。

「この看板はアメリカのチェーン店。食べられたものじゃない。」
ダラスに30年以上住むボリビア人の友人は、
当初、本当に食べ物に苦労したと言う。

実際、空港のレストランで食べるものは、毎回???が付くほど不味い。
今回の旅でも、全ての食事が美味しかったわけではない。
が、選び方と食べ方に気を付ければ、
美味しいものにも出会えることがよく分かった。

しかし、『食べる』という事に対して、
アメリカと日本では、大きな意識の違いがあることも感じた。
それは体質的な違いのように思う。

日本で、むやみにアメリカの真似をするのはよした方が良い。




[PR]
# by mixturamusic | 2018-02-27 22:28
吾妻山
時差ボケを治すためにと、妻に誘われて吾妻山に登った。
隣町二宮にある吾妻山は、今の季節、菜の花を楽しむ人で賑わう。
人の多い所を敬遠する私たちは、噂には聞けども、今回が初めてである。

二宮駅北口からすぐの、『役場口』から登る。
気候の良い日曜日という事もあり、けっこうな賑わいである。
途中300段の石段でバテた。
「こんなはずでは」と思いつつ、何度もベンチに腰を掛けた。

石段を過ぎると、今度は坂道である。
斜面を利用した大きな滑り台があり、子どもたちの歓声が賑やかだ。
息の上がった身体で下から眺めると、頂きはまだまだ上にある。

やっとたどり着いた山頂の公園。想像以上の景色である。
相模湾の向こうに三浦半島。
水平線に沿って目を右に向ければ、小田原の町の向こうに伊豆半島が見える。
c0357413_20482532.jpeg

箱根の山々から富士山、そして薄っすらと雪化粧した丹沢の山塊。
疲れも忘れる良い眺めである。
c0357413_20475970.jpeg

—————————
翌々日、再び吾妻山に登った。
今度は知人の犬を散歩させながら。
別の登り口....傾斜が緩やかな『中里口』の途中からである。

元気な豆柴に引っ張られながら、
今度は息が切れることもなく、一気に山頂に到着した。

「一昨日はやっぱり疲れていたのか.....」
少し安心しながら、再び景色を満喫した。



[PR]
# by mixturamusic | 2018-02-08 21:28
ダラスの朝
テキサス州ダラス。
いつもはトランジットで立ち寄るだけの街に、
数日間だけ滞在した。

晴天に恵まれ、好運に恵まれ、
何よりも良き友に恵まれて、
ダラス〜オースチンと、充実した日々を過ごすことができた。

帰国の日の早朝、友が空港まで送ってくれた。

“Come back soon, really?”
友の奧さんの笑顔が、朝日に輝いていた。

c0357413_00212213.jpeg


遅ればせながら、本年もよろしくお願い致します。




[PR]
# by mixturamusic | 2018-02-03 00:46
美しい月の夜
ラパスに着いて最初の土曜日の夕暮れ、
外から聞こえてくるバンダの音に誘われて、
マルセロの家族と一緒にブッシュ通りに出た。

どこか地方の若者たちのモレナーダに、
十代後半と思しき若者たちのバンダが音楽を付けていた。
「いまは若者たちのバンダの方が仕事が多い。酒代がかからないから。」

そのままブッシュ通りを横切って、ハイチ市場の前にあるマーケットへ行った。
「このマーケット、大きくはないけど、だいたい何でも揃うんだ。」
18才になったマルセロの息子マテオは、日用品をかごに入れてゆく。
「ぼくはこの店知らないよ。」
「そう?ずいぶん前からあるんだけどね。」
街の変化は、冷静に7年の経過を感じさせる。

東の空に、きれいな月が輝いていた。

「この月、クレッシェンドかデクレッシェンドか分かる?」
「デクレッシェンドじゃないのかなぁ?」
「ううん、クレッシェンドだよ。」

マテオも、いつの間にかがっしりとした体格の若者になった。
c0357413_20511039.jpg

月の光は、静かに、美しく、夜道を照らす。
灯りの消えた部屋の隅をも、
ほのかに、優しく照らすのが、月の光だ。

ラパスの街の隅から隅まで、
月の光は知っている。
どこで誰が、何を思っているのか、
月の光は知っている。

黙して語らぬ月の光は、
何から何まで、知っている。
c0357413_20513952.jpg

今宵の月も、息をのむほどに美しい。
明日は冬至である。





[PR]
# by mixturamusic | 2017-12-21 21:26



  木下 尊惇 
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31